ルンタへの旅 9

1

インタビューの冒頭、ダライ・ラマ法王はノーベル平和賞の受賞を素直に喜びたいと述べた。「我々の自由を求める非暴力の闘いは、長年孤立していたが、1989年の今、中国や東欧の人々が民主主義を求めて非暴力の闘いを続けている。仲間が増えたのだ」と。
その一方、ラサの僧侶たちが独立を求めて起ち上がっていることに触れ、「若い人の中には私の中国に対する姿勢が弱腰すぎると非難する人もいる。しかし、もし暴力に訴えれば、それこそ中国の思うつぼにはまるのだ」と非暴力の闘いを続けることへの苦悩をのぞかせた。
さらに興味深かったのは、チベットが抱える深刻な問題について、法王が真っ先に中国人の人口流入を挙げた点である。チベット人の人口はチベット全域で600万人だが、すでにこの年、中国人の人口は700万人を超えていた。「肥沃な土地を選んで中国人の新しい町が次々と建設され、もといたチベット人は山間部に追いやられている。いったんチベットの土地が中国人のものになれば、もはや独自の文化をもつ国家とは言えなくなってしまう」と法王は悲しい表情を浮かべた。26年後の今、法...王が語った現実は比べようもないほどひどくなっている。その証明が140名を超える“焼身抗議”に他ならない。
サービス精神旺盛な法王は、インタビューの合間を縫って、食事のシーンや趣味の機械いじりなども撮影させてくれた。腕時計のバッテリー交換を終えた法王が、カメラに向かって茶目っ気たっぷりのポーズを決めてくれたのが忘れられない。
さらに周囲を驚かせる事態が起きた、インタビュー終了後、法王が自ら照明用のケーブルをさばきだしたのだ。「こういうの好きなのよ」とか言いながら。慌てた秘書官らが「それだけはお止めください」と哀願しても、一向に気にする様子はない。気さくな法王の姿に撮影スタッフ全員が一瞬のうちに虜になったのは言うまでもない。
(写真は照明用のケーブルをさばくダライ・ラマ法王)

「ルンタ」公式ツイッター @eiga_lungta
池谷薫ツイッター @ikeya_kaoru 


関連する記事
コメント
コメントする








   

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< March 2017 >>

selected entries

categories

archives

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM