ルンタへの旅 10

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翌日は、ヒマラヤを越えて亡命してきたばかりの人々が、ダライ・ラマ法王に拝謁するシーンを撮影することができた。亡命者は50人ぐらいいただろうか。雨の中、パレスの中庭に面したテラスに法王が姿を現すと、列をつくって一人ずつ法王のもとに歩み寄り、手を合わせながら恭しくこうべを垂れる。法王はその一人ひとりにねぎらいの言葉をかけ、護符のようなものを渡した。
僧侶を敬うチベットの慣習に従い、謁見を許された順番はこの日の亡命者の3分の1を占める僧侶たちが先だった。その中に、つい最近まで刑務所に入れられていた青年僧がいた。チベットの自由を求め、勇敢にも起ち上がった僧侶に違いない。恐怖の中でその名を叫んだ法王が目の前にいる。感激に言葉を震わせながら彼が告げる。「刑務所ではひどい目に遭いました」と。法王は「つらかっただろう」と優しくいたわりの言葉をかけ、「役所にいって詳しく話しなさい」とつづけた。
もうひとつ印象的だったのは、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた女性が法王に拝謁したシーンである。彼女が何かを告げると、法王は「テンジン・ノルブにしなさい」...と言って名前が書かれたカードを手渡した。名付け親、すなわちゴッドファーザーになった瞬間である。(つづく)
(写真は1989年12月10日放送のTBS「報道特集」より)

「ルンタ」公式ツイッター @eiga_lungta
池谷薫ツイッター @ikeya_kaoru


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